病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「新しい専門医制度を考える」
1.はじめに
「補綴歯科専門医」が日本歯科専門医機構から広告可能とされ、広告可能とされている専門医が「口腔外科」「歯周病」「小児歯科」「歯科麻酔」「歯科放射線」「補綴専門医」の6つになりました。
専門医制度は、主に広告を適正化するという見地から、厚生労働省が主導して見直しを進められてきました。
2.歯科の新たな専門医制度の方向性
歯科では「歯科医師の資質向上等に関する検討会」において検討を重ねた結果、第三者委員会として日本歯科専門医機構が設立されました。
現時点での歯科における歯科専門医の考え方は次のとおりです。
①歯科専門医の定義:それぞれの専門領域において適切な研修教育を受け、十分な知識と経験を備え、患者から信頼される専門医療を提供できる歯科医師である。
②歯科専門医機構が認定する専門医制度の基本的理念:プロフェッショナルオートノミーに基づいた歯科専門医(および歯科医療従事者)の質を保証・維持できる制度であること。国民に信頼され、受診先の選択に際し良い指標となる制度であること。
③専門医の診療領域については、大学の講座(分野)に準じたものを基本とし、サブスペシャリティーについては今後の検討課題とする。
④地域歯科医療における多職種連携、訪問歯科診療、ハイリスク患者の歯科診療などを総合的かつ専門的に行う歯科医師を認定する「総合歯科専門医(仮称)」制度を構築する。
3.新しい専門医資格と学会
新しく設定する専門医資格は前述の補綴専門医を含め次の5つです。
取得するには、それぞれの専門医資格と紐づけられている学会で診査され、日本歯科専門医機構にて認定される必要があります。
① 歯科保存専門医(仮称):日本歯科保存学会と日本歯内療法学会で診査される予定である。
② 補綴歯科専門医(仮称):日本補綴歯科学会と日本顎咬合学会が共同で運営する補綴歯科専門医制度・認定委員会、補綴歯科専門医認定小委員会で審査される。
③ 矯正歯科専門医(仮称):日本矯正歯科学会で診査される。認定医を先行して取得する必要がある。
④ インプラント歯科専門医(仮称):日本顎顔面インプラント学会および日本口腔インプラント学会が連合方式の専門医制度確立を目指して協議を重ねている。
⑤ 総合歯科診療:日本有病者歯科医療学会,日本障害者歯科学会,日本老年歯科医学会の 3 学会が協力して担当している。また、日本顎関節学会,日本歯科薬物療法学会,日本口腔診断学会,などの 13 学会と日本歯科医師会が参加して検討している。
4.まとめ
日本歯科専門医機構では、基本的に第三者委員会である同機構が認定する専門医だけを広告可能とすべきであるとしており、認定された専門医と一般の専門医とは名称等で区別を設ける必要があるとしています。
特に、矯正歯科関係の専門医とインプラント関係の専門医は影響が大きいと考えられます。
とはいえ、既得権として各種学会の専門医の広告表示を認めてしまうと、患者に分かりにくい状況が放置されてしまうことになります。
名称等での区別がどうなっていくのか、関心をもってみていく必要があるでしょう。
以上