病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「歯科医院での管理栄養士の業務を考える」
管理栄養士を受付・助手として採用しようとする歯科医院が増えてきました。
しかし充分に活用できている医院は少ないです。
今回は歯科医院での管理栄養士の業務を考えてみましょう。
管理栄養士は、病気療養者の症状に応じた栄養指導や、個人の身体状況、栄養状態に応じた栄養指導などを担当する国家資格です。
歯科医院では歯科疾患を持った患者さんに対する栄養指導になるため管理栄養士資格がなければ栄養指導を行なえません。
図表は、低栄養と死亡の危険度のグラフです。
体格指数、アルブミン、ヘモグロビン、コレステロール値が低い場合、死亡の危険度が0.5から0.65ポイント高くなります。
低栄養状態を防止する必要性が高いことが分かります。
噛めないこと、軽い食べこぼし、むせ、などオーラルフレイルから、次第にやわらかいものばかり食べるようになり咀嚼機能が低下して低栄養状態に陥ります。
そして筋肉量が減少しサルコペニアになり、外出などの活動量が減少して寝たきり状態に陥ります。
口腔内の衛生状態も悪化し誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
この流れを止めるために、歯科医師が噛める口腔状態を形成し、管理栄養士が低栄養を予防できる食生活を提案し、歯科衛生士が口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防していくという役割分担が期待されます。
歯科医院での管理栄養士の業務の1つは、口腔機能低下症口腔機能精密検査の補助です。
次の7つの下位症状、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下のうち3項目以上が該当する場合に口腔機能低下症と診断されます。
管理栄養士は患者さんの口腔内に触れることができないため舌圧計を口腔内に入れる場合などは患者さんに入れていただきます。
2つめは、口腔機能管理計画策定の補助です。
口腔機能低下症と診断されると、口腔機能管理計画を策定し、以後6カ月ごとに口腔機能精密検査を実施して経過を管理する必要があります。
これを管理栄養士が歯科医師の補助として担当します。
必要がある場合は、MNA簡易栄養状態評価を実施してスクリーニングを行います。
(評価表はWEBサイトからダウンロードできます)。
スクリーニング値は最大14ポイントで、12~14ポイントは「栄養状態良好」、8~11ポイントは「低栄養のおそれあり」、0~7ポイントは「低栄養」と判断し、「低栄養」、または「低栄養のおそれあり」の段階で地域の連携医療機関に紹介します。
3つめは、高齢者の栄養管理に関する問診と栄養相談の実施です。
「栄養管理問診票」を作成し、歯科医師と協議のうえ、必要がある場合は管理栄養士による栄養指導を提案します。
4つめは小児の栄養相談です。
小児のお母さん向けに管理栄養士による栄養相談を実施します。
内容は、むし歯予防の食事、離乳食について、小児生活習慣病検診で食事療法が必要とされたときの食事指導、食物アレルギーの子どもの食材の選定や献立の提案、注意すべき食材などのアドバイスなどです。
5つめは訪問歯科です。
歯科助手業務を行いながらケアマネジャーと連携して、患者さんや家族に栄養指導を行います。
6つめは栄養管理に関する情報発信です。
献立表などを作成している医院があります。
今後ますます歯科医院で勤務する管理栄養士が増えていくと考えられます。
高度な専門知識を持っている専門職であり、受付助手業務だけでなく、幅広い業務を担当させていただきたいと思います。
以上