病医院経営の今をお伝えするコラム
職員に選ばれる病院づくり・マグネットホスピタル〜当院の福利厚生制度〜

当院は、1977年1月の開院以来脊椎外科を主体とした整形外科専門病院として地域に根ざした医療を行ってまいりました。現在は、脊椎疾患に対する診療を中心に、関節疾患・リウマチ・一般外傷やその他整形疾患などの診療にも幅広く対応しています。また、看護・リハビリテーションも充実させ、患者さまが安心・安全に必要な医療を継続して受けられる体制を整えています。
2017年に策定した「クレド」、2020年にコロナ禍で取り組みを開始した「SDGs」により職員間の心理的なまとまりを高め、各職員が自ら考え行動できる人材の育成とチーム力・モチベーションアップ、魅力ある病院づくりにつなげています。地域のみならず世界にも貢献できる組織づくりを目指します。
【当院の福利厚生の方針・考え】
当院の福利厚生の方針は、「魅力ある病院づくり」「選ばれる病院づくり」の一助・醸成につなげていくことを意識しています。なぜなら、現在の日本において人口減少が進展しており、近い将来において働き手不足(生産人口減)が課題として考えられています。当院がある熊本市においても15年後には1割、30年後には2割程度の生産人口減になると予測されています。このような状況下でも職員の定着と離職のバランスを保ちながら、新たな医療従事者などに当院を選んで就職していただけなければ病院運営・経営が成り立ちません。
そこで、福利厚生を充実することにより「魅力ある病院づくり」「選ばれる病院づくり(マグネットホスピタル)」に少しでもつながればと考え取り組んでいます。
それでは、当院の福利厚生を紹介します。
【職員とのふれあい】
(1)職員誕生月会
院長発案による「職員誕生月会」を新型コロナ感染拡大前は毎月開催していました。職員への日頃の感謝とコミュニケーションを図る場として同じ月に生まれた職員が部署の垣根を取り払い、ひとときの時間を食事と会話で楽しみました。日頃一緒に仕事をしない職員との交流も深まり、部署間連携につながったのではと思います。
コロナ禍の現在は院長メッセージ付きの誕生日プレゼントを全職員に贈っています。
「楽しい会を開いていただいてとても嬉しかったです。他部署の方との交流もできて貴重な時間を過ごせました。」(誕生月会に参加した職員より)
「コロナ禍で誕生日会の開催ができませんでしたが、素敵な贈り物をいただきました。焼肉とハンバーグのセット、とても美味しかったです」(誕生日プレゼントを手にした職員より)
(2)職員ボウリング大会・リレーマラソン
職員ボウリング大会を実施されている職場は多いと思います。当院は家族同伴での参加を推進しており、職員および家族とのふれあいも深まっています。毎回会う職員の子どもたちの成長も楽しみです。
リレーマラソンは、地元銀行主催で4人以上のチームで42.195kmを駅伝方式で走る大会です。当院は職員21人で1人2kmずつ(アンカーは2.195km)走りました。20代から50代(私です)まで、医師も3人参加し楽しい大会になりました。大会終了後は焼肉に行き、職員間の交流がとても深まりました。
【サークル活動への支援】
当院には、ソフトボール、ソフトバレー、フットサル、バスケットボール、ヨガ( 美力アップサークル)の5つサークルがあります。それぞれが活発な活動をしていて、健康づくり活動の1つにもなっています。また親睦と福利厚生を目的に「サークル活動助成金規程」を設け、病院として活動支援を行っています。
その中でもヨガ(美力アップサークル)は、病棟看護師の提案により実現したサークルで、専門の講師により週1回教室を開催しており、職員のリフレッシュの場になっています。その活動が健康経営につながっているということで、「熊本県健康づくり県民会議」にて表彰されました(説明画像)。
【患者さまや他の職員から好感度を上げるメイク教室】
化粧品販売店のメイク専門の方に月2回来院していただき、メイク教室を開催。実際にメイクをしてもらい清潔感や信頼感、好感度を上げるようなポイントを教えていただいています。何人かの男性職員もこのメイク教室を体験したようです。
【職員間推薦による職員MVP表彰】
1年間での業務実績や病院に貢献のあった職員(管理職を除く)を職員間の投票(理由を明記)で推薦・選出する「職員MVP」表彰制度を導入しています。年末に募集をかけ、年度初めの「職員総会」にて表彰します。
昨年度はコロナ禍で中止しましたが、今年度は通常どおりMVP候補を募集し、オンラインで表彰式を行いました。
職員のモチベーションアップと生きがいや誇りにつながればと思います。
【部門内・部門間の活性化活動の推進】
各部門が実施する活性化活動に対して当院が補助金を支給する仕組みとして各部門活性化活動補助金支給規程があります。活性化活動とは、レクリエーションまたは研修旅行などを通じて職員の環境を精神面、施設面、経済面で整えることによって気分良く仕事に向かい、能力を十分に発揮してもらうことを目的にしています。部門単位または部署間ならびに病院全体で実施するものが対象で、参加者が当該部門に所属する者の半数に満たない場合は対象になりません。
研修旅行に関しては、病院の業務を行うために直接必要な場合に対象としています。対象の場合は、旅程表、参加者名簿、研修時に使用したテキストや資料、視察旅行であれば視察場所の写真などの証拠となる資料を提出していただいています。
飲食に対しては支給対象外です。部署内、部署間の交流により親睦が深まることやリフレッシュ効果も期待していますが、各部門で実施計画・予算計画、終了後の報告など、企画力やマネジメント力の醸成に役立ち、人財育成にもつながると考えています。
【おいしく食べて元気に…】
患者さまと同じ食事(昼食)を1食330円(税込)で職員に提供しています。330円と安価ということと栄養バランスが取れているので、一人暮らしの職員や外食の多い職員などが多く利用しています。最近ではコロナ禍で外食を控えている職員の利用が多いようです。
SDGsの活動の1つとして1食ごとに開発途上国に1食分のお金が寄付される仕組みをつくっており、たくさん食べて世界に貢献ができればと考えています。
夜勤職員への夕食は、無料で支給しています。夜勤職員が出勤前に弁当などをつくらなくて済むよう少しでもゆっくりしてもらえればと思っています。
【温泉でリフレッシュ】
当院のMS法人が運営する熊本県球磨郡水上村にある「市房庵なるお」(アイキャッチ画像)。天然温泉が湧出する自然豊かな場所にある旅館で、登山、ツーリング、合宿などの目的で幅広くご利用いただいています。3年前に水上村がクロスカントリーコースを設置したことを機に、全国の陸上競技長距離選手の合宿が盛んになっています。
高校、箱根駅伝で有名な大学、実業団も合宿で旅館を利用されています。職員や家族は安価で利用できるよう福利厚生の1つとして親孝行にもつながり、たくさんの職員が利用しています。
【職員が安心で継続して働けるように(働き方への支援)】
以下の事情などによりフルで勤務できない職員のために、「短時間正社員制度」を導入しています。
①育児および家族の介護
②自己啓発
③疾病または傷病による
④社会活動への参画希望 など
現在は5名程度利用していて、職員の定着にもつながっています。その他にも多様な働き方を準備しており、職員が安心して継続して働くことができるよう勤務形態を整えています。
最近では「仕事と家庭の両立支援」に加え、「治療と仕事の両立支援」にも取り組んでいます。仕事によって治療継続に支障が出ないよう病院全体で取り組むよう両立支援コーディネーターも養成しました。
休日・休暇に対しては、入職日から取得可能な「リフレッシュ休暇(年5日)」「1時間単位で取得可能な年次有給休暇」なども導入し職員からは好評です。
【その他の福利厚生】
各職場で取り組まれている忘年会、研修・資格取得に対する費用・休暇支援、健康診断、駐車場貸与、制服貸与、ロッカー、職員相談窓口、ゴルフ練習場割引、サッカー・バスケット・バレーのプロスポーツの観戦チケットなども実施、整備しています(Ⅴリーグのバレーボール選手2人を当院で雇用し支援しています)。
今後も「魅力ある病院づくり」「選ばれる病院づくり」のために、充実した福利厚生になるよう職員みんなで努めてまいります。
産労総合研究所発行 医事業務 2022年1月1日・15日号掲載分一部改編