医業経営とコンサルタントの情報をまとめて検索できるサービス
コンサルタントの方はこちら

コンサルプラス

  • 認定登録 医業経営コンサルタントとは?
  • ご利用方法
  • 無料相談
  • HOME
  • コンサルタントの方はこちら
コラム検索
年度
対応分野

病医院経営の今をお伝えするコラム

増収・経費削減
2026年08月28日

「量」の拡大から「運用密度」の向上へ―ある整形外科病院の経営改革から考える―

執筆した医業経営コンサルタント

西村  俊也

西村 俊也

医療法人社団誠療会
プロフィールを見る

 医療機関を取り巻く経営環境が厳しさを増すなか、「患者数を増やす」「手術件数を増やす」という量的拡大は、依然として重要な経営課題である。しかし、一定の診療規模まで成長した病院では、その先にもう一つの壁が現れる。それは、「増やした診療量を、いかに病院全体の成果につなげるか」という問題である。
 今回取り上げるのは、ある整形外科病院の経営改革である。この病院では、近年、手術件数や新入院患者数が大きく伸び、外来診療も回復基調となった。診療量の拡大は明確な成果であり、経営改善の大きな原動力となっていた。
 ところが、診療実績を細かく見ていくと、別の課題が見えてきた。病床、とりわけ急性期機能を担う病床では、在院日数の短縮が進む一方、病床稼働率には改善の余地が残されていた。つまり、患者を増やし、診療の回転を速めることに成功したからこそ、「次の患者を、どのタイミングで受け入れるのか」という新たな経営課題が浮かび上がったのである。
 ここに、病院経営の面白さと難しさがある。「患者が増えれば経営は良くなる」という単純な話ではない。手術件数を増やせば、手術室、麻酔、病棟、リハビリテーション、薬剤、検査、医事など、さまざまな部門に負荷がかかる。一方で在院日数を短縮すれば、患者一人当たりの病床占有期間は短くなる。診療効率が高まるほど、病床運用の精度が問われるのである。

図1 診療量の拡大と次の経営課題
 【図1】が示すのは、診療量の拡大そのものがゴールではないということだ。量が伸びた段階では、「次にどこを最適化するのか」という問いが経営の中心になる。ここから病院経営は、単純な「集患」から、病院全体の流れを設計する段階へ移っていく。

『「空床」は病棟だけの問題ではない』
 コンサルタントとして特に重要だと考えるのは、空床を単純に「病棟の努力不足」と捉えないことである。空床は、病棟だけで発生しているわけではない。予定入院の調整、手術予定、紹介患者の受け入れ、退院支援、在宅・施設との連携、リハビリテーションの進行、家族への説明、さらには医師の診療スケジュールなど、さまざまな要素が絡み合って生じる。

図2 病床運用の課題
 【図2】は、病床の高回転化が進んだときに生じる「見えにくい空床」という問題を概念化したものである。在院日数が短くなればなるほど、一つの病床が空くタイミングと次の患者が入るタイミングを近づけなければならない。したがって、病床管理は「空いている病床を埋める仕事」ではなく、「患者の流れを止めない仕事」と捉えるべきである。
 そのためには、病床稼働率だけを見るのではなく、入院予定患者の確保、入院から手術までの期間、退院予定日の精度、紹介患者の受入状況、キャンセル、病床回転など、複数の指標を組み合わせて見る必要がある。重要なのは、数字を上げることではなく、数字の背後にある「流れ」を見ることである。

『「量」の次に必要なのは、組織の再設計』
 診療量が伸びた病院では、人員配置の考え方も変わる。医師を増やすだけでは、必ずしも診療能力は高まらない。医師が医師にしかできない仕事に集中できるよう、看護職、薬剤師、リハビリテーション職、臨床検査技師、クラークなど、多職種の能力を最大限に引き出す必要がある。

図3 「量」から「運用密度」への転換
 今回の病院事例でも、診療体制の強化とともに、チーム医療、権限委譲、業務分担の見直しが重要なテーマとなっている。これは単なる業務効率化ではない。「誰が、どの仕事を担うのが最も合理的か」を考える組織設計そのものである。
 【図3】に示すように、病院経営には「量を伸ばすフェーズ」から「運用密度を高めるフェーズ」への転換点がある。運用密度とは、単に忙しく働くことではない。限られた病床、人材、手術室、時間、地域連携機能を、いかに途切れなく組み合わせるかという考え方である。

『病床管理を「病院全体の経営課題」にする』
図4 前方支援と後方支援をつなぐ病床運用
 そこで重要になるのが、入院から退院までを一つの流れとして管理することである。前方では地域連携部門が紹介患者を確保し、後方では入退院支援部門が退院を支える。しかし、この二つを別々に運用していては、病床の流れに隙間が生じる。
 【図4】のように、前方支援と後方支援を一本の流れとして捉え、病床運用を一元的に管理する。そうすることで、「退院を決めること」が「次の患者を受け入れること」につながり、病床を病棟だけのKPIではなく、病院全体のKPIとして捉えられるようになる。

『病院経営の次のステージ』
 この事例から私が感じるのは、病院経営には「量→質・密度」という明確なステージがあるということである。患者が減少している病院では、まず患者を確保することが重要になる。しかし、診療量が一定水準に達した病院では、次の課題が現れる。
 「その患者を、病院全体としてどれだけ効率よく、質高く、無理なく受け入れられるか」である。
 手術件数、新入院患者数、外来患者数、売上といった「量」の指標だけでは、病院経営の本当の姿は見えてこない。病床がどの程度効率的に回っているのか。手術室の時間は有効に使われているのか。医師の時間がどのように使われているのか。多職種の能力を十分に引き出せているのか。入院から退院までの流れに「詰まり」はないか。

 こうした視点で病院全体を見ることが、これからの医業経営コンサルティングには不可欠になる。
 コンサルタントに求められる役割も、単に「収益を上げましょう」と提案することではない。病院が持っている人材、病床、手術室、地域連携、診療機能という限られた資源をどう組み合わせれば、患者により良い医療を提供しながら、持続可能な経営を実現できるのか。その「全体最適」を、経営者とともに設計していくことこそ、これからの医業経営コンサルタントに求められる仕事ではないだろうか。
 「量」を追いかける時代から、「運用密度」を高める時代へ。病院経営の競争力は、単純な患者数ではなく、「一つの病院というシステムを、どこまで滑らかに動かせるか」にかかっている。


コンサルプラス登録コンサルタント 所在地別一覧
  • 北海道
  • 東北
  • 信越・北陸
  • 関東
  • 東海
  • 近畿
  • 中国
  • 四国
  • 九州
  • 沖縄
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会
  • ご利用規定
  • 運営団体について
  • 個人情報保護に関する取り扱い規定
  • お問い合わせ

Copyright © Consul plus All Rights Reserved.