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診療(介護)報酬
2026年07月07日

医療機関移転ルールの全国統一的な運用がはじまります

執筆した医業経営コンサルタント

阿部 勇司

阿部 勇司

オフィス謝府礼
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病院・診療所の移転に伴い「保険診療が継続できる/できない」は、収入に関わる問題だけに移転を検討する医療機関にとっては大きな問題でした。

あらためて述べるまでもないことですが、保険医療機関は毎月の診療に係った費用を月末で締め、翌10日に保険者へ請求をした後、保険者による審査を経て、認められた費用請求が収入として診療の翌々月末までに振り込まれます。

つまり、4月の診療に係った費用は5月の請求を経て6月にはじめて収入となる。なので、保険診療が継続できず、廃止→新規開設ケースでの移転となった医療機関では、売上が入ってくるまでの2カ月間は手持ち資金で給与をはじめとした様々な支払をする必要を強いられてきました。


▼一定の条件のもと、遡及申請の手続きの統一運用がはじまります
これまで医療機関が移転を考えた場合、上記に書いたように保険医療機関として継続した指定を受けるためには、現在地から「半径2km以内」といった暗黙のルールのようなものがありました(地方厚生局によって、この2kmということをウェブサイトで公表しているところもありましたし、していないところもありました)。

移転によりこの2kmを超えてしまう場合には、最悪保険診療の資格が継続できなくなってしまい、一旦廃止→新規指定の手続きをとるか(この場合、保険請求の継続性が切れてしまう)、合理的な理由による移転を都道府県知事に認めてもらう必要がありました。

なぜ2kmかという議論がありますが、このことについては現在通院している患者さんに対する診療の継続性を担保するためと理解していましたし、実際に過去の病院移転において2kmを超えてしまったケースでは、通院している患者さんの継続性を保証するため、移転後に移転前の病院跡地に送迎車を運行するーということで遡及申請を認めてもらった事例もありました。

ただこの事例は対象が「病院」であったことが大きかったと思っており、診療所のケースではなかなか認めてもらえないことのほうが多いのではないかと認識しています。


▼遡及指定と機能移転の取扱い概要
今般改正された遡及申請等の詳細については、令和8年6月5日に厚生労働省保険局から発出された「保険医療機関等の遡及指定及び機能移転の取扱いについて(保医発0605第2号)」を確認いただくとして、ここではその概要について簡単に触れておこうと思います。

原文はコチラ↓

[https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001709016.pdf]

まず大きく分けて2つのケースにおける事例が示されています。

(1)保険医療機関の廃止を伴う場合
このケースは旧医療機関を廃止し、新医療機関として保険医療機関の指定を受け直す場合の取扱いです。開設者変更、個人・法人間の開設者変更等が対象となります。

遡及の可否判断では、診療録・患者の引継ぎ、主な標榜診療科の継続、医師等の継続雇用、診療体制の連続性が重視されます。

至近距離移転や開設者のみの変更で一定要件を満たす場合は、指定申請書、確認書類、施設基準届等を提出するとされていますが、その他の事例の場合は、原則として希望日の3か月前までに予定届出書を提出し、地方厚生局と事前相談を行う必要があります。


(2)保険医療機関の廃止を伴わない場合
このケースは、保険医療機関自体は存続させたまま、施設基準を伴う診療機能を別の保険医療機関へ移す場合の取扱い(いわゆる、通常行われる引越し)です。

この場合の遡及の可否における主な判断要件は、移転元の患者を移転先で継続診療すること、当該機能に従事していた医師等職員の一定割合を引き継ぐこと、病院・有床診療所では地域医療構想調整会議等での議論を経ていること、などとされています。

手続きでは、原則3か月前までに予定届出書を提出して地方厚生局と事前相談を行い、その後、施設基準届と正式届出書を提出し、移転元は機能移転日に対象施設基準の辞退届を提出することなどとされています。


▼基本的な考えは従前と同じで、診療の継続性の担保にある
2kmルールというルールがなぜあったかといえば、それは現在通院している患者さんの「診療の継続性」ということが最重視されていたからであり、今後もこの原則的な考え方は変わることはないと認識しています。

一方でオンライン診療の普及があったり、開業医の先生方の高齢化といった時代の流れもあることを鑑みると、このタイミングで遡及申請の手続きルールが統一されるということは、現場の混乱も最小限に抑えられるという意味で大きな意義のある改善と理解しています。

実際、今回私が関わったケースでも、この通知が出る前の26年2月に相談にいった際には、診療の継続性が確認できるよう、患者さんや家族の同意書の提出を求められていました。ある意味、このタイミングで「申請手続き等の全国統一的な運用を推進する」ということで、ルールが明確化されたのはある意味幸いだったのかもしれません。

社会保険診療支払基金でレセプト審査の統一化が徐々に図られているように、DX化が進んでいくなかでは多くのことが標準化されていく流れを、ここでも感じました。

没個性という面では一抹の淋しさもありますが、同じ認識・同じ理解で物事に取組むことは大きなムーブメントに繋がるもの。そういった意味では、良い意味での承継案件などは加速するのかもしれません。

投稿日:2026年7月6日

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