病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「忘年会など年末年始の院内イベントを考える」
今年も押し迫り、忘年会やクリスマス会のシーズンになってきた。ところが、コロナ禍で今年も中止という医院が多いようだ。もう2年間、院内での飲み会や食事会がない、という医院が多いだろう。
ある大型歯科医院で、新人歯科衛生士の面談の際に、主任からパワハラ的な指導があったと申告があった。5枚法の規格写真を撮影するよう指示を受けて撮影し、主任に見せたところ、怖い顔で「ダメ、やり直し」といわれたらしい。今の新人達は親からも学校の先生からも叱られたことがない。そのうえ、新人歓迎会もサマーパーティも、院内での歓送迎会なども経験しておらず、先輩とは毎日仕事で顔を合わせるだけで、昼食も黙食で親しくムダ話などしたことがない。だから、「知らない怖いおばさんから叱られた!」と、まるで小学生のような恐怖を感じてしまうのだろう。
院内コミュニケーションは、図のように表すことができる。朝礼など医院の方針を職員に伝達する上から下への情報伝達ルートと、スタッフミーティングなど、スタッフの意見を伝える「公式の情報伝達ルート」と、忘年会やサマーパーティなどの「非公式な情報伝達ルート」であり、この両方が機能することで、院長や勤務医、スタッフ同士のパーソナリティや人間的な相互理解が生まれ、指示命令系統が機能し、医院としての組織運営が円滑になる。ところが、コロナ禍によって、これが2年間も機能不全に陥っているのだ。前述の新人歯科衛生士も、その主任とサマーパーティのバーベキューで隣同士になり、楽しく食事しながらおしゃべりをして盛り上がったりした記憶があれば、こうはならなかっただろう。
一つの対策は、新人歯科衛生士や受付、歯科助手に注意するときは、相手の感情と受容性に配慮しながら指導することである。例えば、口腔内写真撮影であれば画像を見せて、「残念だけど、下顎前歯の舌側が写っていないし、スマイルラインが水平にとれていないでしょ。前歯はミラーの角度の調整、スマイルラインはカメラが傾いていないかよくみると防げるから」など丁寧に説明してあげれば、新人もパワハラとは受けとめなかっただろう。
そして、もう一つの対策は、何らかの院内イベントを工夫することである。多くの歯科医院は、総勢10名から20名ぐらいである。小規模であるがゆえに人間関係の問題が起きやすい。しかし、この人数であれば、やれる工夫は多い。あるクライアント医院ではボーリング大会を開催し、終了後に4人ずつのグループに分かれて食事会を行なった。また、ある医院では、二班にわけてお店を変えて食事会を検討している。同じ日に、院長と副院長が別々の料理のレストランを予約して、希望するスタッフに分かれて忘年会を開催するのだ。例えば院長が焼肉、副院長がイタリアンで、どちらが食べたいかをスタッフに選ばせる。これは万一、片方で感染者が出て、同席者が濃厚接触者となっても、残った半数で医院を開けることができるからである。
ここまで読んで、「こんなにまでして、院内イベントを開催しなければならないのか」と感じられるかも知れない。しかし、過去2年間の間に、殺伐とした院内風土に陥っている危険がある。医院に対する不平や不満が次第にスタッフにも蓄積され、ある日突然大量退職という事態に陥る危険もでてくるのだ。今年は何らかの方法で、ぜひ、忘年会や新年会を開催していただきたいと思う。
以上