病医院経営の今をお伝えするコラム
マーケティング・ヒント:「演技とコミュニケーションを心がけよう」

ちょっとしたきっかけで、あいさつをしなくなったり、口をきかなくなったりする人がいます。
しかし、歯科医院は10人から15人ぐらいの小さな社会です。そうした態度をとるスタッフがでてくると、院内の空気がおかしくなり、働きづらい職場になってしまうのです。
A子さんは、入局1年目ですが経験6年のベテラン。明るくて責任感の強い歯科衛生士です。前の歯科医院ではチーフで手技も上手です。
B子さんは、経験2年目の歯科衛生士で、残って手技を練習している熱心な歯科衛生士です。
ある日、院長の指示でA子さんが患者のスケーリングをしたのですが、院長が見ると形成したい部分に取り残しがありました。院長はもう一度A子さんに指示しようとしたのですが、A子さんは終わったと思って消毒室へ行ってしまったのです。
やむなく院長は隣のチェアで患者さんに処置をしていたB子さんを呼んで、取り直しを指示しました。そして、B子さんがスケーリングをしているところへA子さんが戻ってきたのです。A子さんは、B子さんが自分の患者さんのスケーリングをしているのを見て不愉快になったのでしょう。それからA子さんはB子さんを無視するようになりました。
B子さんがつらそうにしているので、主任衛生士が心配して話を聞くと、B子さんは「どうして私がこんな仕打ちをうけなければならないの」と泣き始めました。A子さんは、B子さん以外のスタッフ達とは仲良くふるまうので、次第に院内の雰囲気が険悪になっていきました。
歯科医院は女性中心の職場です。小さな事件がきっかけになって院内がゴタゴタし始めます。
この医院では次第に医院の雰囲気が悪くなり、患者さんへの対応も悪くなり、クレームも増えてきました。そして、遂にA子さんに辞めていただかざるを得ない事態になってしまったのです。
この事件で、A子さんとB子さんがどう思ったかを考えてみましょう。
A子さんは、「私がいないうちにやり直しするなんてひどい!どうして自分を呼びに来てくれなかったの?」と被害者意識を持ったでしょう。
B子さんは、「A子さんが席を外したから、私が自分の患者さんの途中なのにやり直しさせられた。きちんとやってよ!」と被害者意識を持ったでしょう。
このような場合、お互いに自分が被害者と思ってしまい感情が悪化するのです。大人の対応ができる人もいますが、なかにはA子さんのように仕返しをしたくなる人もでてきます。
このようなことにならないように企業ではいろいろな教育をしています。
例えば、東京ディズニーランドでは、スタッフのことをキャストと呼び、お客さんのことをゲストと呼びます。「ディズニーランドにいる間は、キャストは演技をしてゲストをもてなす」という考え方からです。
これは歯科医院でも同じです。診療開始から終了までは、お給料をもらって自分の時間と技術を医院に売っている時間です。ですから、感情を出さずに明るく笑顔で働く演技が必要なのです。
そして、感情のもつれを避けるために必要なコミュニケーションを取る必要があります。
もし、この二人が次のような声掛けをすればどうなったでしょうか。
B子さん「A子さん、先生に言われて、急ぐということでいらっしゃらない間にスケーリングさせていただきました。ごめんなさい」
A子さん「ありがとう、こちらこそ外していてごめんね」
仕事をしていると色々な事態が起きます。そのとき、「よい歯科スタッフの演技」をして感情を表にださず、相手を思いやるコミュニケーションを心がけましょう。