病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「レセプト平均点数の地域差を考える」
1.はじめに
各地方厚生局から令和6年(2024年)のレセプト平均点が発表された。図表は、都道府県別レセプト平均点数である。医科では、都道府県による病床数の差や高齢化率の差などによってレセプト平均点数に差が生じることが説明できる。
しかし、歯科で大部分を占めるのは、う蝕治療と歯周病治療、抜歯と補綴が中心と考えられる。では、どうしてのこのような差がでるのだろうか。
2.1人あたり歯科医療費から地域差の要因を考える
秋田のレセプト平均点数1414点は、栃木の24.8%増であり、栃木では集団指導にかかる点数である。
また、大阪の1408点は、大都市圏の東京、神奈川、愛知と比較して突出している。ちなみに、レセプト平均点数上位の府県の人口1人あたり歯科医療費は、大阪が31,422円で1位であるが、秋田は23,810円で21位、北海道が24,850円で16位、青森は20,066円で46位と決して高くない。
東北は、秋田、青森、岩手など点数が高い地域と、福島、山形、宮城など低い地域に分かれる。これは地域によって歯科疾患の分布状況や高齢化率、食べものや生活習慣、さらに歯科医院の分布などが異なるためではないかと推測される。北海道は、札幌など都会では歯科医院が密集しているが、郊外では広大な農地が広がり、歯科医院への通院機会が限られるため濃厚診療になりがちなのだろう。
しかし、大阪府はレセプト平均点数が2位、1人あたり歯科医療費も1位である。これは、大阪府は他府県のように広大な郡部がなく、大阪市と衛星都市が中心で歯科診療所が身近にあり、受診しやすい環境にあるためと考えられる。
平均点数の低い県では、静岡の1人あたり歯科医療費が22,367円、三重が23,064円、滋賀が21,828円、栃木が21,916円と相対的に低めである。これらの地域では、歯科医院への通院機会も他の地域と比べて少ないのではないかと推察される。
3.まとめ
大阪はレセプト平均点数も1人あたり歯科医療費も他の大都市圏と比較して著しく高い。
しかし、平均点数の低い地域で、大阪で算定できる点数が査定されたり返戻されたりするということは、本来はないはずである。診療報酬は、算定基準どおりに処置を行えば算定できるのが基本的なルールだからである。
もし、「〇〇県では解剖学的に複雑な根管形状の大臼歯の根管治療のCT撮影が算定し放題で、〇〇県では厳しく査定されたり返戻されたりする」というように、地域によって算定ルールが違えば、それは著しく不公平といわねばならない。今後は、診療報酬改訂でも大幅な増点があるとは考えられない。平均点数が低い県の歯科医師会は、他府県の診査会と情報交換を行い、会員に対して正しい保険算定の啓蒙を行うとともに行政にも情報を発信して、できるだけ全国的にみて公平な算定ができるようにしていく努力が必要だろう。
また、算定できている都道府県の状況を、指導監査を行う都道府県や審査する支払基金に対して発信して、全国的に標準化するように要請することも必要だろう。