病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「マイナ保険証の利用を呼びかけよう」
1.はじめに
今年の12月2日から現行の保険証が使えなくなる。実質的に11月いっぱいである。早めに対応して、10月11月に受付で想像される混乱の軽減を図る必要がある。
厚生労働省は、「マイナ保険証利用促進集中取組月間(令和6年5月~7月)」を定めて重点的に利用促進を図ろうとしている。本年12月2日に保険証が廃止されるので、それまでにより多くの国民にマイナ保険証を利用していただき、医療機関の窓口での混乱を防止するためである。
2.マイナ保険証には多くのメリットがある
これからいろいろなメディアでマイナ保険証のキャンペーンが始まる。2024年5月~7月のいずれかの月のマイナ保険証利用人数と、2023年10月の実績及び同月利用人数からの増加量に応じて、最大10万円(病院は20万円)を一時金として支給するとされている。マイナンバーカードを持ち歩くことに抵抗感を持つ人も多いが、厚生労働省の調査では約4割が常時携行しており、必要に応じて持ち歩く人も含めて約7割が携行し、約4割がマイナ保険証を使いたいと考えているという。声をかければ、マイナ保険証を使う患者さんが増えてくると考えられる。
マイナンバーカードには、住民票や印鑑証明がコンビニで受け取れるなど、色々な利便性があり、マイナ保険証として使うと、次のようなメリットがある。
① 医療機関での受付が自動化する:自動的に資格確認ができるので、他人の保険証や前職の保険証を持ち込まれ、資格確認ができないということがなくなり、入力の際の記号番号間違いなどがなくなる。
② 窓口での限度額以上の支払いが不要になる:高額療養費の支払いに「はい」とボタンを押すと、窓口で限度額以上の医療費を立替払いすることがなくなる。
③ 就職・転職・引越しによる保険証の更新が不要となる:転職したり退職したりすると保険証の作り直しが必要ですが、マイナ保険証だと一切の手続きが不要である。
④ マイナポータルから過去の診療情報を閲覧できる:患者さんは自分の過去の診療情報を見ることができ、医院としても過去の資料情報を確認することができる。
⑤ 医療費控除の確定申告が自動化する:マイナポータルをe-Taxと連携させれば、医療費控除の確定申告が自動的にできるようになる。
⑥ マイナンバーカードのマイナ保険証を利用すると、患者さんは窓口負担がちょっぴり安くなる。
⑦ そして、歯科医院にとっても大きなメリットがある。それは診療情報を閲覧でき、過去の投薬履歴をみることができることである。例えば、ビスホスホネート系薬剤を投与されている患者さんを抜歯すると顎骨壊死になることがあるが、ビスホスホネート系薬剤は、半年に一度、病院で注射されている場合があり、患者さんも自分で把握していないケースがある。肝炎の患者さんも投薬履歴から把握することができる。令和6年診療報酬改訂で糖尿病の患者さんはSPTで80点加算を算定できることになるが、糖尿病の履歴も把握することが可能である。また高血圧、心疾患の患者さんなどを含めて、歯科医療時医療管理料45点を算定することもできる。
つまり、医療安全の観点からも、医院経営の観点からも、マイナ保険証にはメリットがある。
3.まとめ
初診患者さんや久しぶりに来院された再初診患者さんに、「マイナンバーカードをお持ちですか?マイナ保険証をお使いになったほうが、窓口負担が少しお安くなりますよ?」と声をかけよう。一度使うと、次からもマイナ保険証になるだろう。 秋から冬に想像される混乱をいまから軽減することを考えよう。