病医院経営の今をお伝えするコラム
マーケティング・ヒント:「小児の医療事故を防止しよう」
弊社のクライアント医院で、幼児の死亡事故につながる危険のある重大インシデントが発生しました。
歯科衛生士が、検診時にSCをするのが危ない為、下顎E~Eの舌側に綿球を使用したところ、ピンセットから外れて口腔内に残り、除去しようとしたところ飲み込んでしまった、というものです。担当はベテラン歯科衛生士でした。気管に入ると窒息し、死亡事故につながる危険がある重大インシデントです。
みなさんのお子さんやお孫さんが、もし窒息して亡くなったらどうするでしょうか。今回は、小児の医療事故防止を考えてみましょう。
小児の死亡事故は全国で起きています。そのうち今回のインシデントに類似の事故は平成22年に発生しています。
6月13日、女児の前歯を治療中、上唇と歯茎の間に「ロールワッテ」と呼ばれる円柱状の脱脂綿(直径0.8センチ、長さ2.5センチ)2個を挟んだのみで、指で押さえるなどの落下防止措置を取らず、1個を口の中に落として気道を詰まらせ、翌日に東京都板橋区内の病院で女児を窒息による低酸素脳症で死亡させた、というものです。
歯科医師だけでなく、歯科衛生士の処置で事故が起きることもあるので、スタッフミーティングで対策を話し合って共有しましょう。
1)事故の発生を防止する:そもそも、綿球を小児の口腔内に何の防護もなく入れることは妥当でしょうか。今回は食道に入りましたが、激しく泣いで息を吸い込んだ拍子に気管に入る危険があります。事故が起きた場合、綿球やロールワッテはレントゲンに映らないので判断ができません。綿球やロールワッテを幼児の口腔内に入れないことが大切です。
2)事故が起きても対処できる予防措置を講じておく:ある救急医療センターの障がい者歯科診療では、ラバーダム防湿を行い、リーマー・ファイル、補綴物にもデンタルフロスをつけ、そのフロスを歯科医師か歯科衛生士が持って診療をしているそうです。弊社クライアントの小児歯科では幼児に必ずラバーダムを設置しています。ロールワッテや綿球にある程度の長さのフロスを通して端を固定しておけば、万一誤飲しても引っ張りだすことができます。
3)事故が起きた場合の対策を共有しておく:このような場合は、すぐにバキュームで吸い取ることを試す必要があります。ピンセットで取り除こうとしても見えないのでとれないでしょう。慌てずに、ついているスタッフがすぐにバキュームで吸い出せば出て来る可能性があります。
このような事故はどこの歯科医院でも起きる可能性があります。適切な準備や対処で大切な命を危険から守ることができるのです。
もし、死亡事故が起きたら医院はどうなるでしょうか。冒頭の歯科医院は閉院してしまいましたが、多くの歯科医院も閉院を考えるのではないでしょうか。また、ウワサになって患者が激減し、経営が成り立たなくなる可能性もあるでしょう。歯科医師や歯科衛生士も、刑事罰を受けることになり、巨額の損害賠償責任を負うことになります。
このような重大なリスクがあるにもかかわらず、つい安易にやってしまいがちなのが人間です。特に、幼児や嚥下機能が低下した高齢者は細心の注意が必要です。みなさんの医院で同じような事故を発生させないように、しっかり対策を講じていただきたいと思います。
以上