病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「つながらない権利に配慮しよう」
1.はじめに
休日など業務時間外の医院(院長)からの連絡に対して、不快感を持つスタッフが増えているようだ。昔は問題になることはなかったが、スマホが普及し、LINEなどでいつでも連絡がとれる時代になり、上司が業務時間外にメールで連絡や指示をするケースが増えているためだろう。すでに欧米では「つながらない権利」が法制化されている。歯科医院でも、休日や業務時間外に職場からの連絡が個人につながらないようにする権利を守る必要がでてきている。
2.歯科医院でも配慮が必要になっている
院内の連絡手段としてLINEグループを作って相互連絡をしている医院が多いが、これが問題になることがある。
あるスタッフ15人ぐらいのクライアント医院では、院内の連絡手段としてLINEグループを作って相互連絡をしていた。院長は自分が思いついたときに忘れないよう、日曜でも夜中でもスマホで受付主任のLINEに打ち込み送信していた。いつもすぐに「既読」になり、休み明けでもきちんと処置をしてくれるため、院長は全幅の信頼を寄せていた。ところがある日、その受付主任から退職願が出てきた。院長はおどろいて理由を聞くと、院長のLINEからの指示が気になるため、休みの日も夜も落ち着かず、精神的に休まらなくなって心療内科を受診していたという。そして、もう限界だと辞めていったのだ。
業務外時間の指示や連絡が原因で精神的不調になって休業した場合、労災適用が認められる可能性がある。その場合、休業補償は労災保険で賄われるが、慰謝料などをもとめて医院が提訴される危険もある。
すでに歯科医院でも、スタッフのストレスを考慮して「つながらない権利」に配慮しなければならない時代になっているのだ。
3.考えられる対策
対策は、業務上の指示や連絡を業務時間外に行わないようにすることである。主に院長が気を付ければよいわけだが、実はこれが意外に難しい。院長は業務時間外や休日にも医院の経営を考えていたり、診療中にできない請求書のまとめやレセプト、カルテチェック、あるいはスタッフの募集や採用などの仕事をしていたりしている。そのときに気づいたり、思いついたりした事項を、いったん何かにメモして、翌日の業務時間にスタッフに指示しようとすると、忘れてしまったり伝える時間がなかったりする。そのため、前述の院長はLINEグループを作って、スタッフに思いつくつど連絡をしていたのだ。ではどうすればよいだろうか。
一つはlineworksの活用である。企業や総合病院などでも院内の連絡手段として活用されているメール送信ツールで、スマホでもPCでも使え、LINEと同じく開けば既読になるので、届いたかどうかが分かりやすい。また、構成員への一斉送信、それぞれのスタッフへの個人送信が使い分けられ、動画や画像を送ることができる。さらに、掲示板に共通の情報を書き込めたり、スケジュール表を共有できたりするなど優れた機能をもっている。人数制限があるが、通常規模の歯科医院であれば無料で使える。そして、業務時間外や休日にメールを送信されても、出勤日以外には開かなくてよいというルールにしておく。そして出勤日には医院からの連絡事項を確認して頭に入れたうえで、朝礼に臨んでもらうのだ。
精神的に不調に陥るのは、真面目でよく気が付く優秀なスタッフである。彼らを失わないために効果的な対策を工夫していただきたい。
以上