病医院経営の今をお伝えするコラム
〝魅力〟の認知を得る

─貴院のある熊本市中央区は同市内の整形外科を標榜する医療機関の4割が集中しています。
西村 当院の強みは、1977年の開院当初から脊椎外科の提供を続けており〝一日の長〟があります。近年では、関節外科やリウマチ科なども専門医による診療に力を入れています。
しかし、強みを持つだけでは継続的に選ばれる病院になることは難しいです。〝マグネットホスピタル〟として、地域住民や職員が自然と集まる病院になるためには、医療・経営・教育などの質の高い病院づくりと当院の魅力を認知してもらう必要があるのです。
─〝マグネットホスピタル〟となるための取り組みをお聞かせください。
西村 質を高め、魅力ある病院となるには、職員が一丸となって丁寧に取り組む必要があり、理念の浸透が重要です。そのため、人事考課において、理念の実現に向けた評価を盛り込みました。また、基本方針や2017年に策定した行動指針「クレド」も人事考課に盛り込み浸透を図っています。
給与体系については、熊本県医療法人協会事務長会で毎年集計を行っている各職種の初任給などを参考に見直しました。また、自分の職種の俸給表を確認できるようにし、透明性を持たせました。私が入職する以前は、公平・公正に定められた俸給表はなく、職員の将来ビジョンが描きにくいといった弊害がありました。
透明性のある評価のために、給与体系は「基本給+資格手当+生活給」とシンプルにし、基本給に重きを置き評価しています。
─地域に向けた取り組みはどのようなことを行っていますか。
西村 地域に向けては、メディア露出に加え、医療機関向けの連携懇談会や市民公開講座の開催、老人会への理学療法士の派遣などをコロナ禍以前は実施。なかでも市民講座は、テレビ局や企業の協賛を受けて300人超の参加がありました。今年も11月末の開催を予定しています。当院を「知らない」前提で情報発信することで、認知機会が増えたように思います。
このように認知を得ることができたことで、コロナ禍であっても22年度まで、2年連続で過去最高収益を更新できました。
ー西村さんの経営メモー
【自然と人が集まる病院づくり】
磁石のように人が集まる病院づくりは、人口減少が今後予想される地域ではいっそう重要になっていく。
【魅力づくりと情報の発信】
医療提供の強みだけでは“マグネットホスピタル”にはなり得ない。労働環境が整い、多くの住民、医療機関に強みを知ってもらうことが求められる。
日本医療企画 最新医療経営フェイズ・スリー 「事務長の目潮流を読む」 December 2023掲載分一部改編
