病医院経営の今をお伝えするコラム
コンサルタントの視点から:「カスタマーハラスメントからスタッフを守ろう」
1.はじめに
患者からの執拗で悪質なクレームが増えています。
明らかに行き過ぎと感じられるクレームはカスタマーハラスメント(略称「カスハラ」)として対応する必要があります。
2.カスタマーハラスメントへの対策
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、顧客からの著しい迷惑行為の内容は、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)」が52.0%を占めています。
歯科医院でも、電話で同じ内容を長時間にわたって繰り返すクレームが多いようです。
この場合、予約に使っている電話回線を長時間通話中にしてしまうため、売上にも影響を与えます。
また、受付担当者が電話応対に手をとられて患者さんの応対や会計などの業務ができなくなり、それを補佐するスタッフが業務に支障をきたすなど、医院の損害につながっていきます。カスハラには次の対応が大切です。
①1対1で面談しない:
カスハラ患者に1対1で面談することは危険です。必ず2人で対処します。
威圧感を受けて対応がエスカレートしにくくなるからです。
②カスハラをする患者と口論しない:
カスハラをする患者は自己中心的な人が多く、「自分は被害者であり絶対的に正しい」と信じており、説明するだけで逆上することがあります。
このため、まずはお詫びして相手の話を聞き置き、いったん落ち着かせてその場はお帰りいただきます。
③長時間にわたるクレームにつきあわない:
電話で相手が同じ話を何度も長時間にわたってくりかえす場合には、「お話はわかりましたので、これでお電話を切らせていただきます」と打ち切ります。
合計で1時間以上にわたって業務に支障がでている場合は、「業務妨害として警察に相談しますのでご遠慮ください」と明確にお断りします。
長時間にわたるクレームにつきあわないことが大切です。
3,カスハラの防止対策
歯科医院でカスハラを防止するための対策をご紹介します。
①無断キャンセルや頻回の連絡キャンセル、遅刻患者の予約を断る:
カスハラをする患者には自己中心的な言動がみられ、無断キャンセルや頻回の連絡キャンセル、遅刻を繰り返すケースが多いようです。
このため、「無断キャンセル3回で以後の予約をお断りする」「15分遅刻したら診療を断り次回の予約を取り直す」などの対策がこのような患者を排除していく効果を発揮します。
②問題患者の報告制度をつくり対処を院内で共有する:
歯科医師や歯科衛生士、受付などがカスハラを受けた場合は、院長や幹部会に報告し、例えば大学病院に紹介する、暴言や大声を出した場合は当院での継続治療をお断りするなどです。
③警察に相談する:
カスハラは、傷害罪、暴行罪のほか、脅迫罪、恐喝罪、威力業務妨害などに抵触する可能性があります。
暴言を浴びた場合は、医院とスタッフを守るために警察に通報し、「あなたのことで〇〇警察署に相談しています」と伝えることも、以後のエスカレートを防ぐ方法の一つです。
4.まとめ
前述のカスハラマニュアルでは、カスハラの心身への影響として、「怒りや不満、不安などを感じた」67.6%、「仕事に対する意欲が減退した」46.2%という従業員の被害が報告されています。
歯科医院には従業員に対す安全配慮義務があります。勤務医やスタッフを守るため、カスハラを受けた場合は幹部会を開いて院内で共有し、歯科医師賠償責任保険に相談したり、弁護士に相談したりして対処しましょう。
以上