病医院経営の今をお伝えするコラム
『医師の働き方改革』タスク・シフト/シェア編 後編 (医師事務作業補助者)

『医師の働き方改革について/タスクシフト・シェア』
後 編 (医師事務作業補助者)
前回は、各医療従事者の具体的事項に述べた。
今回は、医師事務作業補助者の本題に入る。
まず、その前に「医師事務作業補助者について」と「医師事務作業補助者体制加算について」の大項目として2つのカテゴリーに分けるとした。
コラムとして、投稿するならば、「医師事務作業補助者体制加算について」に関しては、シミュレーションや運用方法、キャリアパス形成なども論述したいので、今回は、「医師事務作業補助者について」のみを論述したい。
まず、「医師事務作業補助体制加算」保険点数として評価された背景は、質の高い医療を提供する観点から、勤務医の負担軽減及び処遇改善を図るために医師の事務作業補助の体制を評価する加算として2008年に初めて導入された個別項目であり、導入後改定の毎に増点され2022年の改定では、最高の増点幅は「加算1:15対1の+80点」、最低でも「加算1:100対1の+52点」となり、要件なども緩和され2020年改定では、対象病棟(床)も大幅に追加された。
医師事務作業補助者は、直接医療行為を行わないため、特別な資格や経験がなくても仕事に就くことが可能である、
さらに電子カルテなどの早打ちが出来れば、さらに良いと考える。
ただし、入職後6ヶ月の研修期間が必要で、実際に働くためには32時間以上の基礎研修を受ける必要がある。
基礎研修で学ぶ内容は主に以下の内容である。
【32時間以上の基礎研修内容】
1.医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の医療関連法規の概要
2.個人情報の保護に関する事項
3.当該医療機関で必要とされる一般的な医療内容および各配置部門における医療内容や用語等
4.診療録等の記載・管理および代筆、代行入力
5.電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む)
私も、実際に32時間動画研修を受けてみたが、感想としては、診療報酬請求事務(以下医療事務)経験者であれば、即座に理解出来そうだ。
さらに、医療事務員が、医師事務作業補助者として、医療現場に入れば、請求漏れなどの対策や、医師や看護師等と情報共有が出来たなら経営感覚の具現性の可能性も有り得るのではないか。
そもそも、医療事務のカテゴリーの中から、医師事務作業補助者・診療情報管理士などは枝分かれしたものだと私は考える。
そして業務内容は、
【医師事務作業補助者の業務内容】
下記の業務は全て医師の指示のもとに行う。
1.診断書等の文書作成補助
2.診療記録への代行入力
3.医療の質向上に資する事務作業(診療に関するデータ整理、院内がん登録等の統計・調査、教育や研修・カンファレンスのための準備作業等)
4.入院時の案内等の病棟における患者対応業務及び行政上の業務(救急医療情報システムの入力、感染症サーベイランス事業に係る入力等)、これらに限定される。
つまり、医療事務や看護補助の仕事をしている方を医師事務作業補助者として数えてはいけない(医師事務作業補助者体制加算の算定外)という事となる。
(余談ではあるが、私としては、各医療機関において、逆転的に考える事なども検討してみる事も面白そうだ。)
さらに、今回の改定では、当該保険医療機関において3年以上の医師事務作業補助者として勤務経験を有するものが、配置区分ごとに5割以上配置されていることが医師事務作業補助体制加算1の施設基準になっている。
それは、3年以上の実務経験を有する実務者を配置している施設は70.7%と医師の満足度は高く、3年未満の実務者のみの施設は52.0%と、3年以上の実務経験を有する実務者を配置している施設の方が、医師の負担軽減効果が有意に高い結果であった。
これによって、医師事務作業補助者のキャリアパスなどをどのように策定していくかが、重要であり、この事に関しても、医師事務作業補助者は『医師の働き方改革について』のキーパーソンの一員である事は間違いないと証明された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も第7波と今後も終息しそうもない予感がする。
医師や医療従事者の疲弊は、既に限界を越している。
『医師の働き方改革』、我々国民全員が一致団結してひとりひとりが出来る事から始めたい。
※参考 『タスクシフト・シェアについて具体的な普及・推進策』について
