病医院経営の今をお伝えするコラム
2022年診療報酬改定の中央社会保険医療協議会の個別事項について
はじめに…
皆様におかれましては未曾有の災禍とはいえ、一致団結してこの難局に立ち向かわれている事と存じあげます。
この状況が一日でも早く終息へ向かいますことと、皆様のご健康をお祈り申し上げます。
さて、当協会のMEDICAL INFO/医療情報関連情報に中央社会保険医療協議会 (第513回)総会のリンクが張ってありますのでご参照下さい。
中央社会保険医療協議会の骨子として個別事項が、短冊がPDF形式で、これまで総会で取り上げられた項目が総括(点数などは●印で表記)され、本格的に支払い側と診療側を中心に、また多方面で意見など、侃々諤々の中で、●印が決定され、また内容なども削除されたり、変更されたりする。
まず、個別改定項目については以下の4つの柱で構成されている。
Ⅰ 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
Ⅱ 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
Ⅲ 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
Ⅳ 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
総ページ数は、492頁、数字抜き●や変更等も鑑みて、少し気になるところを抜粋して考察したい。
全体像は、新型コロナ感染対策の評価、医師の働き方改革、医療のICT化の推進、不妊治療の保険適用など新設項目も多い。
その中でも、不妊治療の保険適用は、まさに画期的な事項である。
従来では、体外受精は、1回あたり平均約50万円の治療費がかかっていた。
経済的負担の軽減と、さらに心身の負担軽減につながる事へも期待出来る。
また、新たな選定療養の追加に係る提案・意見の中でも膝関節変形症における再生医療があげられていた。
手術を望まない多くの膝関節変形症患者の選択肢を広げる可能性のある再生医療が選定療養費と認められる事に大いに期待している。
そして私は、2022年の診療報酬改定は、『新型コロナウイルス (COVID-19)と超少子高齢化対応改善対策(BCP)改定』とそう名付けてみた。
さて、本題に戻そう。
1.オンライン初診や外来・在宅のデータ提出の評価を新設へ
医療のICT化の利活用やデジタル化の推進では、初診からのオンライン診療と、施設での療養を行なっている患者に対するオンラインでの医学管理に対する評価を新たに設ける。
外来・在宅・リハビリテーションにおいても、入院のDPCのようにデータ提出を推進する観点から、「生活習慣病管理料」、「在宅時医学総合管理料」、「疾患別リハビリテーション料」等の算定に際して、患者の病態や実施した医療行為の内容等に関するデータを提出した場合の評価を新設する。
オンライン資格確認システムを通じた患者情報等の活用に係る評価の新設だが、これはいわゆるマイナンバーカードの普及率を上げる事を目的としてのものであるとも受け取られる。
2.かかりつけ医と200床以上の病院(救急医療や専門的医療など)との機能分化と連携について
外来医療では機能分化と連携を推進するため、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う「紹介受診重点医療機関(以下、重点医療機関)」について、一般病床200床以上の場合を受診時定額負担の義務化対象に追加することや、入院医療に対する評価の新設などを盛り込んだ。
かかりつけ医機能の評価では、「地域包括診療加算」等の対象疾患対に慢性腎臓病と心不全を追加し、在宅医療のさらなる充実も要件とした。
そして、初診時の「機能強化加算」は診療実態を踏まえた要件の見直しを行うとし、同加算は、施設基準が承認されれば、例えば、風邪などの一時的な疾患でも算定出来るのは、矛盾していると、以前から支払い側からの指摘があり、これはどうなるのか注目したい。
3.疾患別リハビリテーション料の見直し
質の高いリハビリテーションを更に推進する観点から、標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行う場合における疾患別リハビリテーション料の要件を見直す。
ついに、『質の高いリハビリテーションを更に推進する観点』と国民誰もが納得する最終手段が発令した。
具体的には、疾患別リハビリテーション料における標準的算定日数を超えてリハビリテーションを行う場合において、月に1回以上機能的自立度評価法(FIM)を測定していることを要件化する。
これで、介護保険での訪問・通所リハビリテーションを評価した伏線は回収された。
最後に…
今回の改定で最大の注目項目の『医師等の働き方改革』では、勤務医の処遇改善を評価する「地域医療体制確保加算」の対象を、産科救急・小児救急・精神科救急医療を実施する医療機関にも広げる。
医師の時間外労働の上限規制導入に向けて医療機関が作成する「医師労働時間短縮計画」の内容を踏まえた要件や評価の見直しも行う。
政府の経済対策に基づく看護職員の賃上げへの対応は、現在では他の改定項目とは分けて諮問・答申を行う事となった。
タスクシフト、タスクシェアに関しては、「医師事務作業補助体制加算」も同様に要件と評価の見直しが行われる。
私の個人的な意見としては、医師等の働き方改革については、さらに視点を変えた『パラダイムシフト案』提案をしてみたい。
末筆として、この考察に関しては、次回以降のコラムへの寄稿を予定している。