病医院経営の今をお伝えするコラム
【地域医療連携推進法人】令和8年診療報酬改定×新たな地域医療構想:自治体病院・民間病院が生き残るための「地域医療連携推進法人」の考え方 3
■ 2040年問題と令和8年診療報酬改定から読み取る「病院の機能分化」
令和6年度以降、令和8年度の診療報酬改定では、医療DXの推進と地域包括ケアシステムの構築がこれまで以上に強く打ち出されました。
この流れの中で次の診療報酬改定においては、地域医療連携の強化にとどまらず、医療機関の「グループ化」がさらに強力に推進されていくことが推察されます。
各医療機関は、人口減少と高齢化がピークを迎える2040年を見据え、自院の役割の明確化と機能分化を行っていく必要があります。
こうした背景の中、今現在「地域医療連携推進法人」の設立が58法人が認定されています。(2026年3月)
本稿では、都市部・地方部を問わず、今後の病院経営において地域医療連携推進法人を設立・参画することのメリットを3つの視点から考察します。
■ 地域医療連携推進法人がもたらす3つのメリット
【連携モデルの構築による病床回転率の最適化】
1つ目のメリットは、強固な連携モデルの構築です。
患者の選択肢が多い地域や、逆に医療資源が限られている地域においても、急性期病院から回復期・慢性期病院、あるいは在宅・施設への移行が滞るケースが散見されます。
地域医療連携推進法人を設立し、法人内で入退院支援の標準ルールを確立することで、この移行プロセスをスムーズにすることが可能です。
結果として、各医療機関の病床回転率を最適化し、地域全体(法人全体)で効率的な病床稼働を実現できると考えます。
【災害や新興感染症に対する防衛力の強化】
2つ目は、災害や新興感染症に対する地域の防衛力(レジリエンス)の強化です。
平時から法人内で協定を結び、個人防護具などの医療資材の共同調達や、有事の際の役割分担を明確に取り決めておくことが重要です。
例えば、災害や新興感染症が発生した際に重症・中等症・軽症の患者をそれぞれどの医療機関が受け入れるか、搬送のルールを事前に定めておくことで、緊急時の医療提供体制の回復力を飛躍的に高めることが可能になります。
単独の病院では対応が困難な事態においても、法人グループとしての組織力が機能します。
【多様なキャリアパスによる医療人材の確保と定着】
3つ目は、医療人材の確保と定着です。
慢性的な人材不足に悩む医療業界において、これは最も重要な課題の一つと言っても過言ではありません。
地域医療連携推進法人を形成することで、医療スタッフに対し、自身のライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方を提供できるようになります。
例えば、急性期病院での夜勤が負担となったスタッフが、同法人内の回復期リハビリテーション病院や訪問看護ステーションへ異動し、自身の生活環境に合わせて働き続けるという選択が可能になります。
また、急性期で研鑽を積むスタッフが「回復期や維持期の視点を学びたい」と考えた際、法人内の人事交流を通じて、シームレスに専門性を広げられる点も大きなメリットです。
これは、単一の機能(急性期のみ)に限定されたキャリアパスしか提示できない医療機関と比較して、「急性期から回復期、そして在宅まで」という多角的なキャリアステップを描けるようになるのは法人ならではの大きな強みになり得ます。(下図イメージ)
■ 連携からグループ化への転換期
地域医療連携推進法人の設立は、単なる一医療機関からから、経営基盤や人的資源を部分的に共有する「実質的なグループ化」への転換を意味します。
地域の医療資源を最適化し、持続可能な医療提供体制を構築するためには、医療機関ごとのポジショニングを明確にし、機能分化と連携をさらに深めていく必要があると考えます。
今後の病院建築や基本構想の策定においても、単院の建て替えという視点にとどまらず、地域全体の中での立ち位置を見据えた戦略的な計画が求められます。
病院システム
経営コンサルティング部
井之上 晃弘

