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働き方改革
2026年03月24日

「休みやすい職場」が選ばれる時代——医療現場の働き方を見直すヒント

執筆した医業経営コンサルタント

奥野 美代子

奥野 美代子

(株)アイリスプランナー
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最近の日経新聞(2026年3月)にこんなコラム記事を見つけました。

「育児休業の意外な効用、予測不能への耐性磨く」

男性育休取得率が2024年度に40%を超え、三井住友銀行が男性に1か月以上の育休取得を必須化、三菱UFJフィナンシャル・グループが育休取得者の業務をカバーした同僚に最大10万円を支給する制度を導入予定——。

一般企業では、育休を「制度」ではなく「組織を強くするツール」として活用する動きが広がっています。

【医療現場のリアル】
では、病院・クリニックはどうなのか、調べてみました。
医師向けサービスを手がけるエムステージが2024年に実施した調査では、子どもがいる男性医師のうち育休取得経験があると答えたのは9.9%にとどまりました。

「男性育休を取りやすい雰囲気がある」と感じている医師は3割未満。
一方で、「今後子どもができたら育休を取りたい」と答えた医師は2人に1人以上にのぼります。
(出典:エムステージマネジメントソリューションズ「育休に関するアンケート」2024年8月)

医療従事者向けアパレル企業クラシコが実施した調査でも、産後パパ育休に「賛成」と答えた医療従事者は92%に上る一方、「取りやすい環境がある」と答えたのはわずか2割。取りにくい理由のトップは「人手不足(代替要員の不足)」でした。
(出典:クラシコ「医療現場での男性育休に関する調査」2023年)

希望はある。でも、現実が追いついていない。その背景にあるのは、人手不足だけではなく、「自分が休むと誰かに迷惑をかける」という構造的な問題です。

【「くるみん」取得医療機関も増加傾向】
こうした状況の中でも、動き出している医療機関があります。

厚生労働省の「くるみん認定」は、男性育休取得率などの実績をもとに、子育てサポート企業として認定を受ける制度です。2024年時点で、医療・福祉分野のくるみん認定取得は372社、最上位のプラチナくるみん認定は42社にのぼります(女性活躍推進企業データベース、医療・福祉合算)。

全国の病院・診療所数が医科・歯科あわせて、約18万施設あることを考えると、認定を取得している医療機関はまだごく一部です。

認定マークは求人票や採用サイトへの掲載が可能で、「実績のある職場」として他院との差別化につながります。医師・看護師・医療事務スタッフ、いずれも「制度があるか」より「使われているか」を見ています。

【育休より先に、日常の「小さな休み」から】
医療現場では、長期の育休よりも先に整えられる取り組みがあります。

子どもの急病や介護の通院——こうした場面で「時間単位で休める」「シフトを相談しやすい」「申し出ても引け目を感じない」職場であるかどうか。それだけで、スタッフの離職判断は変わります。

日本医師会 女性医師支援センターが紹介した体験談では、ある内科医が「病院で男性医師の育休取得例はなかった」なか、上司に相談したところ思いがけず好意的な反応を得られ、科全体でサポートする体制ができたと振り返っています。「男性が休んでくれると、私たちも引け目を感じなくなる」という女性医師の言葉も印象的です。 (出典:日本医師会女性医師支援センター「男性の育児参画」体験談)

取り組みの入口は、大規模な制度改革でなくてもいい。業務を属人化させず、誰かが休んでもまわる体制を整える。シフトの融通を前向きに検討する。時間休暇を実際に使いやすくする。そうした積み重ねが、「この職場なら長く働ける」という実感に変わります。

制度は、使われてはじめて職場の魅力になります。

【休みやすい職場は、もはや医療経営の戦略課題】
男性育休への取り組みは、医療界だけの話ではありません。

かつて「ハードワークの象徴」とも言われた金融業界でも、野村證券は男性育休の取得促進を経営戦略の一環として位置づけています。建設業界でも、大成建設が男性育休取得率100%を達成。積水ハウスは「イクメン企業アワード2020」でグランプリを受賞し、働き方改革をブランディングに直結させています。

医療界にも、先行する動きがあります。藤田医科大学(愛知県)や東京医科歯科大学(東京都)は男性育休を積極的に推進し、その効果として二つのことが挙げられています。
一つは採用コストの低減——働きやすい環境の整備により、若手医師・看護師の応募が増加したこと。もう一つは職場文化の向上——男性の育児参画が、結果として女性の働きやすさや職場全体の心理的安全性の向上につながったことです。

どちらも、医療機関の経営課題としてよく挙がるテーマです。

「制度はある。でも使われていない」という状況が続く限り、求職者には伝わりません。医業経営コンサルタントとして、男性育休の推進を経営改善の入口として支援する時機が来ているのではないでしょうか。

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