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2026年度診療報酬改定(短冊):リハビリは「離床」重視へ転換。リハビリ技師の将来的な役割の変化も示唆
先日、1/23より、2026年度(令和8年度)診療報酬改定の個別改定項目(短冊)が公表されました。
リハビリテーションに着目してみると、今回の改定では、リハビリテーション医療の質の向上と効率化を目指し、「算定要件の適正化」と「新たな役割の評価」という二つの大きな方針が示されています。
■「離床なし」リハビリの評価適正化
疾患別リハビリテーション料において、患者の離床を伴わない実施に対する評価が見直されます。 今回の改定案では、心大血管疾患、脳血管疾患等、廃用症候群、呼吸器リハビリテーション料などの算定要件において、以下の規定が新たに盛り込まれました。
「注7 1及び2について、イからホまでにかかわらず、特定の患者に離床を伴わずに20分以上個別療法であるリハビリテーションを行った場合は、所定点数の100分の●●に相当する点数により算定する。この場合、通則第4号にかかわらず、患者1人につき1日2単位まで算定する。」
これまで、患者の状態や環境によってはベッド上での訓練が選択されるケースも散見されました。しかし、今回の改定により、早期離床や活動量の向上を促すリハビリテーションがより強く求められることになります。 これは、漫然とした介入を抑制し、治療効果(アウトカム)に直結する訓練を推進するという厚生労働省の意図が反映されたものと考えられます。
■専門職の病棟常駐を評価する新加算
一方で、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の役割拡大を示唆する新たな評価も新設されます。「看護・多職種協働加算」です。
この加算は、急性期一般入院料4や新設される急性期病院B(地域密着型などを想定)の病棟において、看護職員に加え、リハビリテーション専門職や管理栄養士、臨床検査技師などを配置し、多職種が協働して患者の指導や診療の補助を行う体制を評価するものです。 算定要件には、「看護職員を含む多職種が協働して適時かつ適切に専門的な指導及び診療の補助を行う体制」が求められています。
人員配置の基準としては「指導・診療補助を行う看護職員および他の医療職種の数が、常時、入院患者数25(またはその端数)ごとに1以上であること。」と、25対1の配置基準を求められています。
夜勤配置についてや、病棟に配置されたリハビリスタッフがリハビリテーションの単位を取得できるかどうかという点については疑義解釈待ちではありますが、看護師不足に悩む急性期病院にとって、リハビリ職や栄養士等のパワーを病棟ケアに活かせる大きなチャンスになる可能性があります。
■専門職に求められる新たな役割と将来像
今回の改定は元理学療法士の立場で考えると非常に衝撃的でインパクトがあるものでした。
「離床なし減算」の導入は、裏を返せば「リハビリテーション料として算定できる対象者の絞り込み」を意味します。これまでベッドサイドで行われていた介入が算定対象から外れる、あるいは減算となることで、従来のリハビリテーション業務の総量は減少し、結果としてリハビリテーション専門職の人員に余剰が生まれる可能性も否定できません。
一方で、医療現場における看護師不足や介護力不足は深刻さを増すばかりです。そこで新設されたのが、先述の「看護・多職種協働加算」です。 この一連の流れを俯瞰すると、国には、リハビリ業務の厳格化によって生じる可能性のある専門職のリソースを、人手が不足している病棟での「ケア業務(看護補助や介護的な役割)」へとシフトさせたいという狙いがあるようにも見受けられます。
この「看護・多職種協働加算」の新設は、リハビリテーション専門職の職域が、従来の専門的な訓練から、病棟全体のケアを支える役割へ移行していきたいという国の考えにも見えます。
現場で従事しているリハビリ職員は、今後将来的にはリハビリテーションの知見を活かしつつも、実質的には看護補助者、介護士的な役割を担うことも想定していかなければなりません。
病院システム
経営コンサルティング部
井之上 晃弘
