病医院経営の今をお伝えするコラム
2022年4月診療報酬改定予測などのロジックについて PRAT3
はじめに…
今回は、最近のニュースと個人的に気になっている部分を個別的事項として予測してみた。
1.「侃々諤々」
日本医師会の中川俊男会長は記者会見で、医療の価格を定める診療報酬の2022年度の改定について「ちゅうちょなくプラス改定とすべきだ」と述べ、引き上げを要望した。
財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会は「ちゅうちょなくマイナス改定をすべきだ」と提言していた。
財制審の分科会は、新型コロナウイルス感染症の対応に伴う補助金収入があることから「医療機関の経営実態は近年になく好調」だと指摘。
これに対して中川氏は「補助金がなければ赤字の状態だ、補助金頼みの医療機関経営は不安定だ」と主張し、本来の収入である診療報酬で経営が成り立つように引き上げを求めた。
前回の2020年度診療報酬改定では、本体部分は0.55%上がったが、薬価を0.98%、材料価格を0.02%下げ、全体では、0.46%の引き下げとなっている。
診療報酬の改定は本体と、薬価の部分について行われる。増減幅は政府・与党が年末までに大枠を固め、翌春実施する。(上図を参照)
ただ、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況を鑑みながらの改定そして+αとして検討していかなければならない。
時系列にみてもタイムロス状態、難題も累積している。
診療報酬改定については、当協会のホームページの右横に中央社会保険医療協議会 総会 議事次第が時系列に添って載っている。
この検索システムは、とても便利であり、私もよく訪問し情報を得ている。
2.個別的事項
さて、今回は、個人的に、少し気になる部分を予測したい。
① 医療機関における機能の分化と連携(介護も含む)について
かかりつけ医に関しては、2020年の改定で機能強化加算を主として、かかりつけ医認定医以外を受診すると選定療養費として、ワンコイン制度(500円程度)を徴収するという未来予想図を描いていたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で一気にその案は消し飛んだ。
そして、厚生労働省は、診療所、200床未満の病院は、かかりつけ医、かかりつけ医機能として定義するとしている。(下図を参照)
機能の分化を整理する方法論とすると、一般病床が 200 床以上の病院は、救急医療・高度医療・専門的医療を行う医療機関として定義し、200床以上の全ての病院について、紹介状を持たない患者に対し(救急患者など特別の場合を除く)初診及び再診時の「選定療養費」を義務づけるとすると機能分化が明確化され、さらに見える化によって国民にも理解しやすいと考える。
しかも、緩やかなフリーアクセスの制限も可能になる。
② 材料費を技術料への包括化
これに関しては、過去の例としては、点滴セットやガーゼなどが技術料へ包括された。
そして、毎回の様に話題として出ているのがフィルム料とダイアライザー料である。
フィルム料に関しては、該当医療機関は、少ないと思うのだが、これに関して画像診断料が再編される可能性があるかも知れない。
そして、ダイアライザー料も毎回の様に技術料への包括化が予想されてきた。
人工腎臓は医療費の10%を占めるとして、様々な見直しがされた。
技術料を上げてダイアライザー料を包括すると、報酬自体はアップし、材料費はダウンする辻褄合わせとなる。
因みに、地域包括診療加算、地域包括診療料の対象病名の追加として、慢性心不全と慢性腎不全があげられている。
さらに、どこの情報も見ても『選定療養』の文字が散見されているが、下記の項目に関しては是非実現して欲しい。
③ 新たな選定療養の追加に係る提案・意見(中医協総-3.8.25)
〇膝関節変形症における再生医療について
(理由)
膝関節変形症は、種々の原因があるものの、現状保存的治療ないし人工関節置換療法が広
く用いられている。それ以外の選択肢としては、再生医療があるが、適用範囲が幅広いとい
う理由で、保険適用からは除かれているが、有用性が認められている為。
このような選定療養費なら「諸手を挙げて」賛成したい。
最後に…
まだまだここに書ききれないほどの沢山の改定案がある。
例えば、コロナ渦で、セルフメディケーションの普及による受診控えや医療用医薬品から外される薬剤も考えられる。
さらに、超少子高齢多死社会などによる患者数の激減や、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で社会も医療も何もかもが一変した。
医療機関の収入源のほとんどが診療報酬である。
診療報酬改定に柔軟に対応できる医療機関のみが生き残れる時代がすでに訪れている。