病医院経営の今をお伝えするコラム
2025年度のベースアップ評価料算定に向けた手続きの再確認 ―4月から実施すべき3つのステップ―

■24年度改定で新設されたベースアップ評価料
ベースアップ評価料は、近年の食材料費や光熱費等の物価高騰、他業界の賃上げの状況等をふまえ、医療業界における人材確保や賃上げを図るために2024年度の診療報酬改定で新設されました。これらの財源を用いて、賃上げの目標値は、2023年に対して2024年度は+2.5%、2025年度は+2.0%の実現を目指すとされています。ベースアップ評価料を原資とした賃上げ配分方法については、「2024年度もしくは2025年度に一律の引上げ」と「2024年度と2025年度の2年間で段階的な引上げ」のどちらかを選択することができます。
ベースアップ評価料の対象職種は、薬剤師・看護師・理学療法士など主として医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)となっており、専ら事務作業(医師事務作業補助者、看護補助者等が医療を専門とする職員の補助として行う事務作業を除く)を行う職員は、対象外とされています。
ベースアップ評価料の概要は図表1のとおりです。病院の場合には、主に「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」と「入院ベースアップ評価料」の両方を算定していくことになります。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、初診時6点など医療機関によって点数の違いはありません。一方で、入院料ベースアップ評価料は、区分が1点~165点まであり、医療機関が計画書などの届出を行うことで区分が決定する仕組みとなっています。
■2025年度のベースアップ評価料算定に向けてやるべきこと
ベースアップ評価料の施設基準では、2024年度中にベースアップ評価料を算定している医療機関は、「2025年度分の賃金改善計画書」と「2024年度分の賃金改善実績報告書」の2つを期日までに届出することが求められています。今回の通知では、その手続きの詳細が明らかになりました(図表2)。
最初に行うべきことは、2024年度分の「ベースアップ評価料収入」と「賃金改善措置による賃金増加分」の差額の確認です(Step1)。賃金増加分は「賃金改善後の給与総額」から「賃金改善前の給与総額」を引くことにより計算します。
この差額の把握により、必要に応じて、2025年度の賃金改善計画における対象職員へのベア等の金額を見直すことができます。仮に、評価料収入よりも賃金増加額が想定以上に多かった(医療機関の持ち出しが想定以上に多かった)場合には、2025年度の賃金改善計画を見直す必要があるかもしれません。一方で、評価料収入が賃金増加額を上回り余りが出ている場合には、その余りは2025年度に繰り越して2025年度分の賃金改善に用いる必要があります。
つぎに、2025年度分の賃金改善計画書を策定していきます(Step2)。
「賃金改善計画書」を毎年4月に作成して、6月30日までに、地方厚生(支)局に届け出る必要があります。厚生労働省の特設ページには、届出様式として、「評価料Ⅰ専用届出様式」と「従来版様式」の2つがアップされていますが、病院の場合(入院ベースアップ評価料を算定している場合)は「従来版様式」を用いていくことになります。
そして、最後に2024年度分の賃金改善実績報告書の作成です(Step3)。
こちらもベースアップ評価料を算定している医療機関においては、毎年8月31日までに前年度分の賃金改善実施報告書を地方厚生局に届け出る必要があります。賃金改善実績報告書様式については、「報告書専用様式」が準備され、事務手続きの簡素化に向けて所定様式の見直しが行われました。
これらの届出に関する内容は、厚生労働省の特設ページに詳しく記載がありますので、詳細はそちらでご確認ください。
また医療機関によっては、届出時に作成した賃金改善計画書と8月に提出する賃金改善実績報告書の内容が異なってくるケースもあることが想定されます。その点に関しても、疑義解釈通知では、“実際に行った賃金改善実績が「賃金改善実績報告書」に記載されていれば問題ない。また、「賃金改善実績報告書」の記載にあたり、必要に応じて、届出時点の「賃金改善計画書」を修正しても構わない。”としています。
今後も新たな情報が厚生労働省の特設ページ「ベースアップ評価料等について」にアップされることが想定されますので、定期的にチェックしていきましょう。
(参考)厚生労働省の特設ページ「ベースアップ評価料等について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
