病医院経営の今をお伝えするコラム
■採用につながるホームページ
診療所のマーケティングを専門としているので、診療所の先生やコンサルタントの方々から、診療所にSNSは本当に必要なのか、採用に効果はあるのかという相談をよく受けます。
最近ではインスタで採用できるという噂から、インスタを始める診療所が増加しています。2023年の学会発表の準備のため、診療所のホームページやSNS活用の実態を調べました。今回は、欲しい人材を集めるデジタル採用術について、解説します。
■採用できる診療所のデジタル採用術とは?
ポストコロナの求職者の特徴は、とにかくスマホで調べることです。求人サイトで興味をもってもすぐに応募はしません。欲しい情報を集めようとホームページを確認します。SNSがあれば、必ず見に行きます。
実態を知りたいとブランディングができている診療所のWeb上での情報発信について調査しました。『ブランディングができている』の根拠は、診療所経営の専門誌「くりにっくばんぶう」で成功事例として紹介された診療所としました。
2022年6月号から2023年6月までの1年間に、「くりにっくばんぶう」の『集患・増患』および『採用・組織』の特集で紹介された30院を対象に、ホームページ、採用ページの特徴、SNSの活用状況について調べました。
「〇〇なら〇〇クリニック」と言われるブランディングができている診療所は、ホームページがあるのはもう当たり前、4割はホームページとは別に採用ページを作っています。そのあたりに採用につながる秘訣がありそうです。
■ホームページは10秒が勝負
求職者は最初の10秒で好きかどうか直感的に判断します。
「いいね」と感じないと採用ページには行きません。
トップページには診療方針や雰囲気が一目でわかるようにしておきます。
ホームページがあると言っても決まりきった住所やサービスだけの案内では採用にはつながりません。
採用できる診療所のホームページには共通の特徴があることがわかりました。
■採用できるホームページの特徴
・トップページに院長・スタッフの写真を多用
・トップページに方針・特徴を明確に示している
・トップページから採用ページ、SNSへ誘導
・採用ページやSNSへのリンク
集患に評価の高いホームページであっても、トップページや各ページにスタッフの写真がほとんどない場合は、採用への効果は低いと思われます。
■採用ページは必須
調査した30院の多くでは、トップページのお知らせには、「〇〇 何名募集中」と記載し、採用ページへ誘導しています。メニューボタンにも「採用ページ」のボタンをつけます。
採用ページと通常の求人ページとの違いは、自社サイト内の求人ページでは、現在の募集中の職種と募集要項(求人概要)を紹介している程度ですが、採用ページは自社サイトとは別に、採用専門のサイトを用意したり、LP(ランディングページ)と呼ばれる1枚ものの採用専門のウェブサイトを用意したりしています。採用ページについては、別の回で詳しくご紹介します。
■SNS(インスタ)の活用状況
採用目的のインスタがあれば、トップページの上部もしくは下部にSNSのリンクを貼っておくとSNSへ誘導するのに役に立ちます。
今回の調査では、ブランディングができている30院がどのSNSをどのように活用しているのかを調べました。過半数の診療所では、インスタグラム、LINE、Facebook、YouTubeを使っています。
SNSの複数併用についても調べました。
30院のうち、4つ以上のSNSを使っている診療所が12院もあります。
一番多いのは6つ。それ以外に、自社サイト内に院長ブログ、スタッフブログを掲載しているところも少なくありません。
6割の診療所は、2つ以上のSNSを使っています。
この調査では、ブランディングができている診療所は、積極的にSNSを使って情報発信していることがわかります。
SEO対策と同様に、SNS運用を外部事業者に代行する方法もありますが、複数のSNS運用は院内で分担しなければできません。チームで取り組んでいるのではないかと考えられます。
集患だけでなく採用面でも地域から選ばれるブランディングを行うためには、ホームページに加えて、採用ページの積極的な情報発信とSNSを活用した広報戦略を立てて実施することが不可欠と言えます。